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森川鬱平(以下:森):よう。

スクープ・ブランシスコ(以下、スク):何を注文したん?

森:グリーン・ティー・エスプレッソだ。そっちは?

スク:普通のコーヒー。

森:この店のオリジナル・ブレンド?

スク:えっと、どうかな?まあコーヒーの味の違いなんてよく分からないし。

森:それで、最近は何やってんの?まだチャラチャラ絵を描いたりしてんの?

スク:そうだね、いつも絵を描いてるよ。

森:毎日?

スク:毎・・・それはどうでも良いじゃんか。そっちは?

森:いやー、相変わらず仕事仕事仕事で忙しい毎日だよ。今日は何か新作でも見せてくれるんじゃないの?

スク:ちょっと待って・・・と。サイトを見てくれ。

森:チーム・ソーバー・アーティストにCD・・・新聞と外に連れてけジャケットに・・・芸術家ライセンス?最近はこんな事しかやってないの?

スク:なんか問題でも?

森:ついさっきまでいつも絵を描いてるって言ってたじゃないか!

スク:だから描いてるって。というより、強制的に描く様にしてる。

森:何か新作の絵は無いの?

スク:そりゃもちろん、あるよ。“関係シリーズ”に“檻”、“画家のアトリエ、3分後”、それと“札束ベッド”・・・

森:全部、昔の作品じゃねーか!

スク:えっ、・・・まあ古かろうと何だろうと、そりゃ関係ないよ。絵を描くのって本当に膨大な時間がかかるんだし、前はそれらの絵を描き終えるのに十分な時間が無かったんだ。

森:それで今回、やっと描き終えたと?

スク:うーん・・・あと少しだね。大体、描き終えた様には見えるけど、あと2回ぐらい重ね塗りしても良いかも・・・いや、もう終わりで良いかな?もう終わりってことにしようそうしよう。

森:単純に頭を切り替えることはできないの?4、5年も前の絵を今更描き終えるのに何の意味があるっての?

スク:自分の場合、これが頭を切り替える術というか。絵を未完のままほって置いたら、きっと一生、後悔したままだと思う。過去のしこりを残した状態でどうやって頭を切り替える?その後悔しているものがまだ修復可能なら、全力でそれを修復すれば良い。簡単なことだよ。分かります?

森:そりゃ分かるけどさ、俺が言いたいのは果たしてそれをやる必要があったのかどうかということだよ。その未完の作品を完成させようとどうしようと、この世界はこれっぽっちも変わりゃしない。ひょっとしたらアンタはこの一年を無駄にしたのかもね。

スク:無駄にした・・・と?いや、まさか。君は世界を変えることのできない絵は無駄だと?

森:そう言ったわけじゃないんだけど。

スク:そう言うなら現代美術のほとんどの絵は無駄さ。ちょっと言って良い事と悪い事があるんじゃないのか?

森:いや、だから他の芸術家の事を話していた訳じゃないし。アンタのことしか話してないんだから。

スク:未完の絵達が自分に話しかけたんだ。「どこにも行かないで!まずはおいら達を終わらせてよお!」ってね。絵ってのは自分にとって子供の様なものだからね。

森:でもなんだかんだ言って古い作品だろ?何か新作は無いの?

スク:孤児・・・そう、孤児みたいなものだよね。君がもし道端で「絵の具が欲しい」とせがむ孤児がいたのなら、そのまま通り過ぎるかね?君はそんな冷血な怪物かね?

森:いや、違うけど・・・アンタは俺の質問に答える気はないのか?何か新作は・・・

スク:孤児をしっかりと教育して安住の地を探してあげるのは私の責任です。もちろん、ちゃんと屋根のある所ね。これはかなり大変なことなんだよ。「絵の具が欲しい」ってせがむ孤児を無視して、そのままスタスタ歩き去るよりもずっと大変なこと。分かる?

森:孤児は普通、「絵の具が欲しい」なんて言わないよ!孤児が欲しいのはー

スク:君に何が分かるんだ!

森:いや・・・俺、孤児だったから。

(2010年10月に行われたスクープ・ブランシスコ氏と森川鬱平氏の会話より抜粋)



 
 

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