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スクープ・ブランシスコ(以下スク):本日はリンさん、MELT!、そしてジョンさんにこの様な素晴らしい機会に呼んで頂き感謝しています。これは私にとって本当に特別な場です。私自身のことを話すとのことですが・・・リンさん、あなたが“ユニークな人を探している”との広告を出した際、どの様な意図があったのですか? リン:そうですね、私は自分自身であることに誇りを持った人々を探していました。正直言って、紙袋を頭に被っている様な人は問題がある気がするのですが。 スク:確かに。ただし、本日私がこれを被っているのは少し風邪をひいていることもありまして、余計な風邪のウイルスを広めたく無いという意図もあります。 リン:私は殺菌消毒済みなので大丈夫です。 スク:話は元に戻りますが、私は正直、人間は誰でもユニークだと思います。誰かれ彼なり、彼女なりのユニークな個性がございますし、それはただ表現方法の違いとしての・・・ リン:しかし、社会はその個性を消そうとしてはいないですか?“社会に受け入れられる”とは結局そう言う事では・・・ スク:あなたの言う社会とはアメリカ社会のことですか? リン:そうです。 スク:うーん、私は自分が自分らしくあり続けるための機会というのはアメリカ社会の中にも結構あると思うのですが。学校の中には成績があり、試験や部活があり・・・ リン:そう、そして次の階級に行くには試験なり、ある程度のレベルに達しないといけません。そこで疑問を持つのです。なぜ次の階級に行かないといけないのですか?ここはある意味核心的なところですが・・・なぜ? スク:それは・・・そうですね。 リン:結局、社会の流れの一部にしかならないのです。 スク:それはそうですが、人はそれぞれ違った道を行きますよね。 リン:例えば? スク:例えば・・・私は絵描きですし、私の様に、まったく同じ様な絵を描ける方は他に存在しないはずです。 リン:あなたはどの様な絵を描きますか? スク:ちょっと変わった絵ですね。 リン:何てこと!てっきりあなたはマドンナとか・・・反キリスト教的な絵を描いているのかと思っていましたわ。 スク:反キリスト教?私は反キリスト教ではありませんし、特にクリスチャンでもありません。 リン:あら、私も違いますわよ。 スク:それでは何故聞くのです? リン:あなたがどちらかと言うと伝統的な絵描きだと思ったからです。 スク:私の作品はまだご覧になってないのですか? リン:いえ、一応見ましたけど。全体的に模倣的でなかなか興味深い作品です。ではあなたが視覚的な分野に進もうと思ったきっかけは何ですか?その分野を選んだことであなたの人となりが分かりますが・・・ああもう、この紙袋には未だに慣れないわね。ちなみにSafeway(アメリカの大手スーパー・マーケット)を選んだ理由は何ですか? スク:単に私がSafewayが好きだからです。彼らはもうじき開業100周年をお祝いする予定です。 リン:私達と一緒に誕生日パーティーができるわね。 スク:その通りです。あなたもSafewayが好きですか? リン:いえ、私は嫌いです。 スク:そうなんですか?では、どのスーパー・マーケットによく行かれるんですか? リン:そうねえ・・・よく行くのはNardi'sね。この近所にはなかったかしら。そのお店はイタリアの製品が中心なの。それに私はイタリア人の男も好きなのよ。 スク:イタリア人の男? リン:そうよ。イタリアの男は(略)でイタリアンな部分が(略)だから好きなのよ。 スク:ちょっとちょっと!スーパー・マーケットの話をしていたのに・・・ リン:私はただ(略)見て(略)だから(略)夢見ることを言いたいだけよ。 スク:それは・・・良かった。 リン:先ほどの質問、あなたがなぜ視覚的な分野に進もうと思ったかについてですが。 スク:なぜと聞かれるとなかなか難しいもので・・・私の場合、ごく自然に絵を描いていると言うか。息をするのと同じ感覚です。 リン:いつ頃始めたのですか? スク:4歳ごろからですかね。 リン:両親に勧められましたか?それとその頃、あなたはどこに居ましたか?サンフランシスコですか?・・・それともSafeway? スク:私は近所に・・・Daly Cityに居ました。 リン:Daly City!?なんてこと!それでは絵を描き始めたのも納得がいきますね。それではあなたがDaly Cityにいた際、美術以外の学校の授業の成績はどうでしたか?たぶんほとんどの教科でAを取っていたのではないですか?ほとんどのアジア系の生徒は優秀ですね。生まれつきなのかしら・・・ スク:それはステレオタイプと言うか、必ずしも正しくはありません。 リン:彼らはどこからとも無く飛び出しては計算してるイメージね。 スク:違う!あんたは何も分かっちゃいない!! リン:そりゃそうよ。あたしゃユダヤ人だもの。 スク:例えば100人のアジア人がいたなら、その中の80%は数学が得意かもしれない。でも残りの20%は・・・ リン:あなたは20%の中の一人だったの? スク:まあ、そうですね。 リン:それじゃ、あなたはユニークだったんじゃない。 スク:そんな訳でもありませんが、絵を描くのだけは比較的上手かったかもしれません。 リン:油絵?それともアクリル絵の具? スク:最近は油絵がほとんどですが、幼少のころは水彩だったと思います。 リン:それは凄いわね。水彩絵の具って世界中で一番難しい絵画手段じゃないかしら。 スク:そうですが、一番安全なので。 リン:一番安全って? スク:水彩絵の具を食べる事はできますが、油絵の具は絶対に食べられないでしょう? リン:おやまあ、あたしゃ絵の具なんて一度も食べたことないだわしゃ! スク:まあ4歳のころはどの絵の具も色鮮やかで美味しそうに見えたものです。 リン:それじゃ、あなたの母親は絵の具を食べて良いと許可したの?彼女は料理をしなかったの? スク:いや、もちろん料理はちゃんとしてくれましたよ。 リン:例えばどんな料理?ディムサムとか? スク:お米とかですね。 リン:あなたが絵を描く習慣が付いてから、学校に通い始めて何か起こりましたか?あなたの同級生とは交流がありましたか? スク:そうですね・・・実を言うと、絵を描くのはある時期、止めてましたね。 リン:なぜ? スク:単に面倒くさくなったのでしょう。絵を描くというのはかなりの重労働ですから。 リン:そうよね。世の中の人々は絵を描くという事がどれだけ大変な仕事か理解していないのよね。本当に。 スク:その通りです。 リン:でも、私にとって絵を描くというのは“仕事”では無いのよね。むしろ、“解放”よ。 スク:絵を描く事が解放?あなたの一日のスケジェールとはどういった感じですか? リン:私の一日のスケジュールは、朝起きて夜寝るまでするべき事をできる限り速く済ませることね。私は最近、お笑いを始めたんだけれども、練習は常に欠かせないわ。今日だってここに来る前にかなり練習したのよ。それに私の犬は最悪なのよ。 スク:あなたの犬もお笑いをすると? リン:いえ、犬がお笑いをするわけないじゃないのよ。奴らは排泄をするだけよ。 スク:まあそれが生理的に自然と言えば自然ですね。 リン:私は絵を描く事でリラックルできるの。多分、あなたが絵を描く理由とは違うわね。私は絵を売るためには描かないの。常にね。私はただ絵を描きたいから、アイディアがあるから絵を描くの。言葉で表現するのは少し難しいかもしれないけど。 スク:それでは、あなたの絵を買いたいと言う方が現れたらどうされるんですか? リン:私の絵に値段をつけることはできないわ。それは買いたければ売るけど、値段はどうでも良いわ。まあ額がある時は額の値段によって価格が決まるわね。言葉じゃ私の考えや感覚が伝わらないことがあるから絵を描くのよ。それは人間という動物の宿命かもしれないわ。たくさんの壁にぶつかった時、どう仕様も無い時・・・私達は絵を描くのよ。私は家族とあまり良い意思疎通ができなかったの。学校でも意思疎通が上手くできなかったし、夫ともそう。私は意思疎通ができなかったの、完全に。それから私は絵を描き始めたし、小説も書き始めた。お笑いも始めた。そしたら何でも良い方向に向かって行ったの。あなたは自分の絵を売ったりするの? スク:まあ、たまに。 リン:売りたいとはお考え? スク:今は全てを手放したいという想いの方が大きいですね。 リン:それは収納的な意味で? スク:そうです。 リン:信じられないかもしれませんが、私のお笑いには深い意味があるのよ。世界は苦悩の宝庫で、あなたが嫌になることばかりかもしれないわ。でも私の絵にはそういった意味はまったくと言っていいほど含まれていないの。ちなみにあなたは今、どこに住んでいるの?Daly City? スク:いえ、近所に住んでいます。 リン:あら、そうなの?それなら次にここに来る時はあなたの絵を持って来なさいな。それが良いわ。あなたのご両親はあなたが芸術の道に進むのに賛成だったのね。その他には?生活の為に他に何かしていらっしゃるのかしら? スク:今は仕事を探していますね。 リン:この時世、みんな探してますわね! スク:そう。なんですかね?この景気の悪さときたら! リン:私はそれをお笑いの題材にもしてます。この後に見せますから。 スク:そうですか。実は今、結構いろいろな問題を抱えているんですよ。 リン:誰だってそうでしょう。そう思いませんか? スク:まあ、中にはどんな問題でも上手くやりくりできる方もいらっしゃいますが。 リン:どうやっているのか、私には分からないわね。お金が無ければどうやって食べていけるのかしら。それであなたのご両親はまだご健在でいらっしゃるの?まあ私のはもう大昔に亡くなってしまったし、例えば父親に電話して“お金が必要なの”とは言えないの。そんな感覚はもう持ち得てないわね。 スク:まあ、世間というのは厳しいものです。新しい場所に引っ越して景気が悪ければ尚更です。それでも何とか自分を順応させなければいけません。まずは誰かを探すこと・・・同志と言える誰か。そして団体に属し、それに慣れる事・・・自分の足で立って、少しずつ周りの環境を変えること。少しずつ自分の理想郷を構築していくのです。 リン:そうね、その意気よ。ところでその紙袋、デートに行く際も付けているかしら? スク:そうですね、たまに。 リン:それで大丈夫なの? スク:最初は誰からも奇妙だと思われますが、最終的には慣れる様です。 (このインタビューは2009年11月、MELT!のリン・ルース・ミラーによって行われました)
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